PROFILE 建築家プロフィール

斉藤 智士

斉藤 智士

Satoshi Saito

所属
建築設計事務所SAI工房
所在地
〒666-0013 川西市美園町3-3-13
TEL
072-714-0248
FAX
072-714-0248
Mail
info@saito-ao.com
HP
https://www.saito-ao.com
経歴
2011年 京都造形芸術大学 卒業
広渡建築設計事務所を経て
2013年 建築設計事務所SAI工房設立
2021年〜京都芸術大学・摂南大学 非常勤講師

2021年 大阪建築コンクール渡辺節賞
2023年 JIA中国建築大賞2022 奨励賞
2023年 第15回くすのき建築文化賞コンクール 佳作

W0RKS 実績紹介

堰の家

計画にあたり、住宅地から山林に抜ける心地よい風を取り込み、豊かな山林の風景を住まいはもちろん住宅地に寄与出来るよう南北に抜けのある空間を計画した。この抜けのある空間に紐付く2つのボリュームを設け、浮いたような大屋根で敷地全体を大らかに包み込み、住宅地から山林へと風、光、人が誘われる住まいとした。
 道路側に設けた大きな建具は、自然(山林)と人口(住宅地)を繋ぐ堰として機能する。開け放つことで水が流れ込んでくるように、建物内部に様々な環境が混ざり合う。子供が中、外関係なく走り回り、プールで遊んだり、バーベキューを楽しんだり出来る。またギャラリーや習い事の教室等としても利用出来る空間にもなる。逆に大きな建具を閉めると、人が集い寛ぐリビングとなり、24時間多用な形で利用出来る住まいとなる。この多様な空間を包み込む約9mスパンの大屋根は東端5本+西端5本の合計10本のみの柱で支える木構造とし、空間の自由度を担保した。棟中央、登り梁と桁の接合はホームコネクターを用い、木軸ラーメンのように組み合わせた。また2つのボリュームを3本のH鋼で繋げることでスラスト力を負担しタイバーなどを使わない架構を作り出し、南北の抜けを作り出す浮いたような大屋根を実現した。

写真:山内紀人

KOKAGEビル

広島県呉市を舞台に、老若男女問わず、その人らしい暮らしをおくるための「地域共生社会」を理念とした医療法人を主体とし、社会 的障壁を超えて「誰もが気軽に集える交流の仕組み」を持つ新しい地域医療・地域福祉のあり方を提案するプロジェクトである。
この建築は、呉に根付いた「 通りで交流する独自の文化」 から着想し、誰もが自由に出入りできる街路空間を立体的に織り込みながら都市に奥行を生み出している。空間の自由度を高め、自然と居心地の良い場所で脚を休めることのできる「木陰のような」都市的空間の創出を目指している。
出来る限り様々な人の流れを生み出すため、建物前面には十分な「引き(外部空間)」を確保し、通りを敷地内部まで引き込む配置計画とした。さらに、内部は開放的な空間を生み出すために、4枚のスラブをスキップさせながら縦動線でつなぎ、上下に人の流れと滞留を創り出しながら屋上へと導く空間となる。最上段には格子状のスラブが浮き上がり、この立体空間を「木陰」で包み込んでいる。活動、休憩、待合い、談話など微妙な機能の違いを展開するこの4枚のスラブは、医療施設利用者だけでなく、誰もが自由に使える空間であり、その利用者が立体的に行き来したり、脚を休めたりする様は、まさに呉の街路環境を立体的に纏った建築の様相を表出する。昨今のネット環境の発達や外出自粛の強制などで拍車のかかる身体的なアクティビティの低迷に歯止めをかける環境づくりこそが、これからの「医療」が、単なる治療行為を超えて、人と関わり続ける社会に必要不可欠ではないかと考える。

写真:山内紀人

榛原郷の床と屋根

敷地は兵庫県丹波篠山市に位置する田園風景が広がる豊かな環境。大沢城跡をはじめ、周囲に遺跡が点在し、眼前には水路が流れている。この地には、古代に湖が広がっていた伝承がある。それは不思議と納得のいく風景が広がっており、本計画では自然と戦い、寄り添いながら里山を形成してきた歴史を持つこの地に、新たな時を刻む建築の姿を想像した。
昔から湖の上に建っていたような人工地盤を持つ住まいをつくる。浮遊感のある土間スラブを覆うように、大きな軒下空間の中で内部と外部を一体的に設計した。夫婦と子どもが新たな生活を営む為に必要な水回りや個室を最小限にまとめ、人工地盤の上に少し振りながら配置した。残った余白をリビングや玄関、洗面スペース等、それぞれに適したボリュームとして活用し、用途に適した天井高さを与える。リビングは開放的に、洗面スペース等は最小限の高さとして計画した。この構成により南北に高さを抑えた勾配を持つ屋根と、それぞれを繋ぐことで生まれる東西に捻った屋根を持つ住まいが立ち現れたていった。平屋のようなプロポーションと捻った大きな屋根は、周囲の民家や山並みに呼応する。大きな軒下空間を支える耐震壁を外周にバランスよく配置し、壁と壁の隙間には、周囲の豊かな環境を暮らしに取り入れる事が出来る大きな開口部を設けた。光や風、水の音、四季、風土を感じながら周囲の風景が暮らしに溶け込み、彩りを与える。また、数十年後の近未来では、建て替えを含めた新たな計画が生まれてくるはずである。その際、必ずこの人工地盤は、周囲の環境を含め、無視できない強いコンテクストとして、未来の設計者が歴史を踏まえ計画していくだろう。 山々と田園風景、そして水路として存在するかつての湖と新たなこの建築の関係が時間を超え、はるか太古からそこに佇みながら応答してきた建築として、過去、未来の里山の姿を示していけるのでは無いかと考えた。

写真:山内紀人

MESSAGE メッセージ

クライアントの要望はもちろん、潜在的な要望、周辺環境、暮らしの文脈を見定め、設計に活かすことを心掛けています。

MASTERPIECE 代表作

2019年 堰の家
2019年 1+house
2022年 雁木通りの家
2022年 KOKAGEビル
2022年 榛原郷の床と屋根